「造り手・伝え手・飲み手」
さて私。〈赤貝とねぎのぬた〉は味噌味はほんの少しで酢が仕事をし、葱がうまい。〈カワハギ肝ポン酢和え〉は肝を風味にして上品。「秋田山内地域で栽培されている里芋」と注釈された〈山内芋の唐揚げ〉はみごとに大きく、ほこほこ感と深い味がたまらない。酒を「羽前白梅俵雪つや姫」に替え、一粒ずつの箸が止まらない〈炒り醤油豆〉は、大豆をひと晩、水に浸け、フライパンで炒って醤油たれにひたしておくとか。
「つまり煮てないと」「そうです」。これは座右に必置きの一品だ。
不思議な店名は名杜氏・石川達也さんの名付けで日本酒の「造り手・伝え手・飲み手」を表したという。私は遥か昔、石川さんが神亀酒造で修業しているころから知り合いで、広島竹鶴酒造に杜氏で入ったとき訪ね「小笹屋竹鶴」のラベルデザインを頼まれたことがあった。今は茨城の月の井酒造に在籍。杜氏として初めて文化庁長官表彰、日本酒造杜氏組合の要職も務める方。ご主人は竹鶴時代に知り合ったそうだ。
私が荻窪でテレビ取材していてばったり会った角野卓造さんはすでに三度来て「あそこは名店です」と太鼓判を押した。
開店して一年少しの居酒屋がたちまち食通に知れわたる。誠実な良い仕事をしていれば人は訪ねてくる。私も常連になろう。とても気持ちの良い感想を持った。
「酒と肴 ててて」
住所:杉並区荻窪4-32-8-101
TEL:03-6279-9016
営業時間:平日17時〜23時、土日祝15時〜22時
定休日:月曜日(不定休あり)
(編集協力:春燈社 小西眞由美)