文=加藤恭子 撮影=加藤熊三 写真提供=今田酒造本店

1980年代、今田酒造本店の先代が開発したスパークリング日本酒の先駆け「白美」。改良を重ね、「富久長」シリーズのロングセラーとなっている。瓶の中で発酵を続けた心地よいシュワシュワ感と、淡いうすにごりが涼しげ。暑さがまだ残るこの時期にぴったりの、ドライな辛口純米! アルコール度数14%で軽やか 「富久長 純米にごり スパークリング 白美」(今田酒造本店)500ml  1650円
 

“吟醸酒発祥の地”、安芸津町三津

 淡雪のような美しいうすにごりの酒をグラスに注げば、細やかな泡が弾ける。シュワシュワ感とともに感じる印象は、爽快&ドライ! 多くの日本酒ファンに愛される人気銘柄「富久長」を醸す、今田酒造本店らしいやさしいうまみとともに、さわやかな甘酸っぱさも広がる。

蔵の目の前には、瀬戸内海のなかでも清浄な海域でカキの産地でもある三津湾が広がる 撮影=前康輔

 瀬戸内海に面した小さな港町、広島県安芸津町。なかでもひときわ清らかな三津湾に面した安芸津町三津は、知る人ぞ知る「吟醸酒発祥の地」だ。

“吟醸酒の父”ともいわれるのが、1847年、この地に生まれた醸造家の三浦仙三郎。彼はそれまで酒造りに不向きとされてきた軟水の発酵力の弱さを逆手にとり、低温で醸すという「軟水醸造法」を確立。このまったく新しい技術によって、現在、当たり前のように飲まれている吟醸酒は誕生した。

今田酒造本店の銘柄「富久長」は、吟醸酒の生みの親である三浦仙三郎が命名した 撮影=前康輔