イブとの暮らし

 一方、Cさんと離婚した野崎氏は、愛犬イブと一緒に暮らしていた。

 身の回りのことは、田辺市にある家政婦の斡旋所から派遣されたお手伝いさんにお願いしている時期もあったが、すぐにお手伝いさんを「泥棒」呼ばわりするので、斡旋所と何度も喧嘩し、以降、お手伝いさんを派遣してもらうこともできなくなっていた。

 野崎氏には脳梗塞の後遺症もあり、呂律が回らない部分もあった。また交通事故の後遺症で歩行もおぼつかなかった。年齢を重ねるごとに自由に動けない身体になっており、体調面でも好不調の波が大きくなってきていた。そのため1週間も寝室に閉じこもって、若い男性従業員に頼んで買ってきてもらった弁当で食事をすませる日々も少なくなかった。

 おそらく野崎氏は、出て行ったCさんへの想いを募らせていたのではないだろうか。夫婦関係が続いていたら、料理自慢のCさんの手料理も食べることができたのに、と感じていたのかもしれない。

 女好きの野崎氏は、気に入った女性との結婚を常に望んでいた。東京で交際クラブから紹介された若い女性と会うことはできたが、それは所詮おカネによる繋がりであり、そこには結婚に発展するような愛情の芽生えはほとんど期待できない。それでも何度かデートを重ねた女性にいざ結婚を申し込んでみると、土壇場で逃げられることが続いていた。

 そんな時に知り合ったのが早貴被告だった。