内視鏡での安易な麻酔利用は危険

 そもそも内視鏡検査は、プロポフォールのような完全に眠ってしまうような麻酔薬を使わなくても実施することができる。

 今回の番組で、内視鏡検査は眠って行えばよい、それが安全だと誤解されるようなメッセージが伝わったとすれば問題である。内視鏡検査は基本的に健康な人が受けるものであり、プロポフォールというリスクの高い薬を使ってまで実施するのは望ましくない。

 また医療現場で内視鏡検査にプロポフォールが使われるとしても、それは内視鏡検査をどうしても受けたいができないという、医療の課題を解決するために仕方なく選ばれる選択肢であると言える。特に問題のない状態で、無理やり検査を受けるというシチュエーションも不自然だ。

 今回の番組企画は、麻酔薬の安全な使用を前提とした医療現場とは異なり、エンターテインメントの目的で行われたため、日本麻酔科学会からの強い非難を受けるに至った。国民に誤ったメッセージを伝える危険性が高いと言わざるを得ない。

【参考文献】
静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用」について

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表取締役/編集者 獣医師
 東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPにおいて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。獣医師。
 ステラ・メディックス:専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修をサポートしている。また、医療情報に関するエビデンスをまとめたSTELLANEWS.LIFEも運営している。
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