そもそもプロポフォールの内視鏡使用が問題では?

 先述の通り、今回、麻酔の投与を正当化する理由として示されていたのは、内視鏡検査を一緒に行ったという点だ。今回の企画が倫理的に許されるとしたら、その一点が許容されるかどうかが大きな問題になる。

 筆者の認識としては、プロポフォールを内視鏡検査に使用すること自体が問題だと感じた。端的に言えば、プロポフォールはリスクが高すぎると考えるからだ。そこで、ある麻酔科医の意見を聞いてみた。

 日本国内では、2013年に日本消化器内視鏡学会が「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」を発表し、この中で内視鏡検査でプロポフォールを使うことが可能であると示された経緯があった。このガイドラインを踏まえると、内視鏡検査でプロポフォールを使うこと自体は可能である。

 だが、この麻酔科医は「内視鏡時のプロポフォール使用は積極的に勧められるものではない」と指摘した。

「欧米では、非麻酔科医によるプロポフォールの投与に関するガイドラインが存在しており、安全に使用できるような教育体制が整っています。それに対して、日本ではそのようなシステムや指針が十分に整備されていません。現時点で非麻酔科医が安全にプロポフォールを使用できるかどうかは、慎重に判断する必要があります。それはガイドラインにも明記されています」

 内視鏡検査ではプロポフォールではなく、一般的に使われている別の睡眠導入薬であるベンゾジアゼピン系薬剤を使用できる。プロポフォールは、ベンゾジアゼピンよりも、舌が落ち込んだり、血圧が低下したりするような作用が強い。

 プロポフォールは、他の鎮静手段が効果を示さない場合や、ベンゾジアゼピン系薬剤が使えない場合に限り使用されるべきだと筆者は考える。

 人間ドックはそもそも自費診療だが、何かの病気や症状の検査であっても日本では内視鏡検査時のプロポフォールは保険が適用されない。それは安全性に懸念があるためだ。