「イスラエルはイランの石油施設を標的にしない」

 15日に発表した月報で、世界の今年の原油需要の伸びは日量86万バレル、来年は100万バレルと想定している。増加のペースは昨年の半分だ。IEAは「中国の8月の原油需要は前年比50万バレル減少し、4カ月連続でマイナスになった」と指摘している。

 中国の9月の原油輸入量は前年比0.6%減の日量1107万バレルだった。5ヵ月連続で前年割れとなっている。1~9月の原油輸入量も前年比2.8%減の日量1099万バレルだった。
 
 中国の原油需要の4~5割は輸送部門で発生している。世界最大の自動車市場となった中国では新車の半分がEV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリット車)となっている。長引く不動産需要の低迷でプラスチック製品など産業用需要も落ち込んでいることから、中国の原油需要は今後、さらに減少する可能性が高いだろう。

 IEAは「米国などの生産増加により来年に入ると世界の原油市場は供給過剰になる」との見通しを示している。

 需給面の悪材料に抗う形で中東地域の地政学リスクが原油価格を下支えしてきたが、この「つっかえ棒」がなくなってしまった感がある。

イランではイスラエルに対する反発が強まっている(写真:AP/アフロ)

 米ワシントンポストが14日、「イスラエルはイランの石油生産施設を標的にしない可能性がある」と報じたことで、原油価格は一時5%超下落し、2週間ぶりの1バレル=70ドル割れとなった。その後も70ドル前後で推移している。

 石油供給に支障が生ずる懸念は減退したものの、「11月5日の米大統領選挙前までにイスラエルがイランに報復攻撃を行う」との見方が一般的だ。イスラエル首相府は15日、「米国の意見に耳を傾けるが、最終決定はイスラエルの国益に基づいて下す」とのコメントを出しており、イランの石油関連施設への攻撃の可能性がゼロになったわけではない。