米軍が開発中の「ドローン・ドッグ」(米国防総省のサイトより)

米国防長官、レプリケーター2を指示

 米国防省のキャスリーン・ヒックス国防副長官は2023年8月、「レプリケーター(Replicator)」構想を発表した。本構想は「レプリケーター1」と称されている。

 今年9月27日、ロイド・オースチン国防長官は、米軍の作戦に脅威を及ぼす致死的な攻撃ドローンなどへの対処が国防省の重点事項になることを記した、同省・米軍首脳ら宛ての覚書を発出した。

 この覚書は、「レプリケーター2の方向と実施」のタイトルが付けられている。

 この2つの構想は、現在進行中のロシアのウクライナ侵略(ウクライナ戦争)や、中東のイスラエル・ハマス戦争を支援するイランの代理組織といわれるレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラ、イエメンのイスラム教シーア派反政府武装組織フーシー派などによる小型無人機攻撃からの教訓を取り入れたもので、表裏一体をなすものである。

 ウクライナ戦争では、小型無人機がゲーム・チェンジャーの一つとして華々しく登場し、特に戦力的に劣勢なウクライナが無人機を使ってロシア軍の進攻を阻止することに成功したことが大きなヒントになっている。

 他方、イスラエル・ハマス戦争では、イランの代理組織などによるイスラエルへの攻撃や紅海におけるタンカー、民間船舶、米海軍艦艇への「複雑な攻撃」への対処に優先的に取り組む必要性を認識させている。

 すなわち、米国防省・米軍にとって、小型無人機を攻撃的に利用すると同時に、敵対勢力の小型無人機攻撃をいかに阻止するかが、今後の作戦・戦闘行動に優先的に取り組むべき重要課題として急浮上した。

 そのため、オースチン国防長官は、小型無人機に係わる政策、作戦構想、システム開発、統合、戦力維持などの広範な取組みに、シニアリーダーたちの集中的かつ持続的な注力を求めたのである。