レプリケーター2の方向と実施

 オースチン国防長官は、前述の覚書で、小型無人航空機システムが最も重要な施設と戦力集中にもたらす脅威に対抗するという、作戦・戦闘上の優先事項に取り組むべきと判断したと述べている。

 すなわち、レプリケーター2の狙いは、対小型無人航空機システム(Counter-small Uncrewed Aerial Systems:C-sUAS)の開発・配備にある。

 2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以来、紅海の商船やタンカー、米海軍艦艇などは、イランの支援を受けるフーシー派による陸上配備型対艦巡航ミサイル・弾道ミサイルと低速小型無人機の群れによる攻撃という二重の脅威に直面している。

 また、ハマスを支援するISIS(イスラム国)などのグループは、イラクやシリア、ヨルダンの米軍施設に向けて一方通行の武装ドローンを断続的に発射している。

 今年1月のヨルダン北東部の米軍基地に対するイラクとシリアで活動する過激な親イラン武装勢力による無人機攻撃では、米軍兵士3人が死亡、30人以上が負傷した。

 この無人機攻撃では、ドローンが低空侵入したため、発見・識別できなかった可能性があると指摘されている。

 また、同基地には、ドローンを無力化したり、標的への進路を妨害したりするために設計された電子戦システム以外には、対ドローン兵器が配備されていなかったという。

 これを受け、オースチン国防長官は、紅海に展開する海軍艦艇やイラク、シリア、ヨルダンの米軍基地などの重要な資産に対するC-sUAS能力を大幅に改善し、米軍への攻撃に対処することがレプリケーター2の国防省の重点事項になると述べている。

 この際、国防省のシニアリーダーや連邦議会の議員などの間には、「数千ドルのドローンを数百万ドルのミサイルで撃墜することは悪い交換だ」と指摘しており、このことには適切な対策を講じる必要がある。

 C-sUASとして、電子戦システムが有効であることは、ウクライナ戦争でも証明されているが万能ではない。

 そのため、機関砲や電磁砲(レールガン)、レーザーなどの指向性エネルギーなど様々な手段を組合わせた複合・多層システムの構築へと、レプリケーター2は向かうことが予想される。