最前線に近い場所に兵器を貯蔵するため施設を拡張

 昨年9月から今年2月下旬にかけ、北朝鮮は1万個以上のコンテナに軍需物資や軍需関連物資を積んでロシアに輸送したとみられる。最前線により近い場所に兵器を貯蔵するため、チホレツクやモズドク、エゴリョフスカヤ兵器貯蔵施設の開発や拡張が行われた。

 米外交雑誌フォーリン・ポリシー(10月3日付)は「ウクライナの国防高官と米国の外交官が同意している点が一つある。それは北朝鮮からロシアへの武器供給がロシアの侵略を撃退するウクライナの能力にとって最大の脅威の一つだということだ」と伝えている。

 同誌によると、米国務省の分析では少なくとも1万1000個のコンテナが到着し、その中に兵器が含まれる。ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ局長は新たな貨物が到着してから約1週間後には戦場に影響が現れると警戒する。

10月8日、ウクライナ統治下のロシアの町スジャ。地域住民はウクライナ軍司令官事務所が用意した避難所でさまざまな支援を受けている(写真:Titov Yevthen/ABACAA/共同通信イメージズ)
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 北朝鮮から送られた砲弾の正確な数については160万発から600万発と推定に大きな幅があるが、専門家は200万発以上が今夏までにロシアに送られたと推計する。砲弾の多くには何らかの欠陥があるとされるが、その見返りにプーチンは何を約束したのか。

 金正恩が核兵器、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含めたロシアの兵器開発技術を手にしたら北東アジアの安全保障はさらに大きく揺らぐことになる。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。