「厭物」をまき散らす伊周一派の“衝撃的な犯行”
一方の藤原道長はといえば、自身の娘で一条天皇の中宮・彰子(あきこ)と、その子の敦成親王(あつひらしんのう)、そして自分自身が何者かに呪詛されていることが発覚する。呪いのお札が、内裏で見つかって大騒ぎとなった。
ドラマでは、円能(えんのう)という僧が実行犯として捕らえられ、依頼者として藤原伊周(これちか)の叔母・高階光子(たかしなのみつこ)と、伊周の義理の兄・源方理(かたまさ)が逮捕される。『権記』や『日本紀略』にも同様の記述が見られるため、伊周一派が実行犯とみて間違いないだろう。
ドラマでは、一心不乱に木製の人形を刃物で斬りつける伊周の姿が衝撃的だった。平安時代には「厭物(いやもの)」と呼ばれる呪物を屋敷の床下や井戸に隠すことで、相手を呪ったという。
伊周の処分については「死罪」が妥当とされる中で、道長は「されど私は官位はく奪が相当と考えます」と、一条天皇に申し出るシーンがあった。
「そなたが呪詛されていたというのに、寛大なことだ」という一条天皇に対して、道長は「私はともかく、中宮様、敦成親王様が呪詛されたのは許し難いことにございます。されど厳しい罰を与えることで、これ以上恨みを買うことは避けとう存じます」と答えている。
その言葉通り、怒りというよりも大切な人に危害が及ぶ恐怖の方が上回ったのではないだろうか。
道長の温情で助かった格好となった伊周だが、その後、道長に「なにもかも……お前のせいだ!」と激しい言葉をぶつける。道長としても、やりきれない思いを抱いたことだろう。