「住民の命・生活を守る姿勢を見せてほしかった」
喜田:もちろん、国や県にはやむにやまれぬ事情もあるのでしょう。ただ、「国土強靭化」を国として標榜しているのであれば、目に見える形で林業政策を打ち出してほしかった。
住民の生命・生活を守る姿勢を見せてほしかったですよ。きちんと林業に予算をつけて、持続可能なものにする姿勢を見せてほしかった。現実問題、今回の浦上地区で発生した水害は、全国の山間部のどこでも起こりうる可能性があるでしょう。
山の所有者が責任を持って治山治水し、それで生活できるようにしなければなりません。さもないと、山林の保水力は落ちていく一方です。
──山間部の集落の家屋はすでに全半壊し、道路も寸断されている。ライフラインの復旧もなかなか見込めないとなると、集落の未来はどうなるのでしょうか。
喜田:ゴーストタウンのようになるしかないのではないでしょうか。浦上地区の公民館付近に公営住宅を建てるとして、未来はわかりません。高齢化も進んでいますから、先のことは本当に見通せません。
市にして見れば、公営住宅建設の経済効果も考えるのは当然です。そうなると、やはりもう一度浦上地区で子どもを育てられるようにしなければなりません。
僕らが子どもの頃、浦上地区には小さいながらも商店が15〜16軒ありました。それが地震の前は1軒になり、ついには地震でその商店もなくなってしまいました。理想を言えば、林業の復活とまではいかなくても、山の管理と現金収入で暮らせるような状態を取り戻していく必要があると思います。それが、災害に強い地域をつくることにもつながるのではないでしょうか。