うわっ、大気の流出量少なすぎ・・・?

 火星の大気に何が起きたのかを調べる目的で、火星周回機「MAVEN(メイヴェン)」が2013年に打ち上げられました。MAVENは「Mars Atmospheric and Volatile EvolutioN」の略で、直訳すると「火星大気・揮発性物質変遷調査機」というところでしょうか。MAVENは今日も元気に火星を周回中です。

(ちなみに「MAVEN(メイヴェン)」のように、英文の頭文字をつなげてひとつの単語として発音する語を「頭字語(acronym)」といい、「USA」のように文字をひとつずつ発音する語は「頭文字語(initialism)」といいます。MAVENも後述のInSightもずいぶん凝った頭字語で、おそらく言葉遊びの好きな中の人が考えたのだろうと思わせます。)

 MAVENは質量分析器や太陽風の分析装置を備え、火星から宇宙空間へ流出する原子の量や、太陽風による影響を測定することができます。これで太陽からの高速粒子が火星大気をぶっ壊す様子がばっちり観察できるはず、と期待されました。

 ところが実際に測定してみたところ、明らかになったのは、火星から宇宙空間への大気や水の流出量は意外に少ないということだったのです。

 これは一体どうしたことでしょうか。太陽風に大気分子を吹き飛ばす力がないとすると、太古の火星に満ちていた水と濃い大気は、一体どういう機構で消失したのでしょう。