「渡辺二郎に3000」のメモ

 大阪地裁で開かれた裁判では、羽賀の妻が持っていたメモ帳の内容が明らかにされた。そこにはある日付のところに「渡辺さん、3000」と書かれていた。検察は「これは渡辺二郎に対しての謝礼の金額ですよね」と追及するも、羽賀はこう答えた。

「(渡辺には)日頃お世話になっているので、(妻が)お菓子を買ったときのメモだと思います。ですから渡辺さんに3000円のお菓子という意味だと思います」

 あまりに都合のよすぎる釈明に、傍聴席からは声を抑えた笑い声が上がるほどだった。

 もちろん検察は、大阪のホテルの喫茶室でY氏を脅迫しハンコを押させた謝礼として羽賀容疑者から渡辺らに3000万円が支払われたものと見ていた。3億6000万円の借金が1000万円で済むのなら、謝礼として3000万円を支払ったとしても十分おつりがくる。羽賀はそう計算したのだろう。

 だがこの大阪地裁での一審は羽賀に無罪判決が下る。決め手になったのは羽賀側の証人による証言だった。ところが、この証人が嘘の証言をしていることを検察は突き止める。そのため高裁では羽賀に有罪判決が下り、最高裁も羽賀の上告を棄却し、羽賀に対して懲役6年の実刑判決が確定した。