「核抑止力を持っている」と誇示

 VOAなどが引用する軍事専門家の分析を見ると、DF-41の改良版テストが目的である、という見方がある。DF-41の改良版DF-51が開発中で、これは射程距離1万5000キロ以上、搭載可能核弾頭数14個で同時に複数の目標を攻撃することができる、らしい。このDF-51のテストをかねて、米国ら国際社会に向けて中国の核パワーを誇示してみせた、のではないか。

 台湾の中華戦略フォーサイト学会研究員の王信がVOAに語ったところによると、「目的は射程がいわゆる『第二列島線』を超えてハワイ海域まで届き、米国本土を攻撃する可能性があることを米国に知らせるためだろう。同時に、発射した弾頭を回収し、着弾地点との誤差を計測するためだ。今後、関連情報が公開されたり、情報が洩れ伝えられたりしたとき、西側諸国は中国共産党のミサイル能力の成長に驚くだろう」という。

習近平国家主席の狙いは?(写真:新華社/アフロ)

 カーネギー財団研究員のアンキット・パンダはAFPの取材に対し、今回のテストは「中国がこの分野で現代化を進めており、新たなテスト発射が必要であったということを意味するかもしれない」と語った。

 フランス国際関係研究所(IFRI)アジアセンター主任のマルク・ジュリアンは、「中国からワシントンに向けたシグナル」と分析。「ミサイルの着水点が米軍基地のあるグアムから遠くなく、中国としては競争相手の米国に対して自国がすでに、『核抑止力』を持っており、完全にオペレーションでき、その射程、照準の正確さも、信頼できるのだということを示したかったのではないか」という。「中国の兵器庫にはすでに、米国本土とインド太平洋地域を目標にできるだけのものがあるのだ、と示したかったのだ」と。

 もう一つアングルの違う見方がある。もちろん、軍事実力アピールには違いないのだが、それは他国に対する威嚇というより、自国軍の尊厳を守るためのパフォーマンスである可能性だ。

 というのもこのコラムでも何度か取り上げたが、昨年から解放軍はロケット軍を中心に大規模粛清が展開されてきたのだ。