しかし、ヒズボラは、24日にはイスラエルとの「戦争状態」を宣言する。25日には、テルアビブ近郊のモサド(イスラエル対外諜報機関)を狙ったミサイル攻撃を行った。通信機器爆弾を仕込んだのはモサドだと判断したからだという。

 ネタニヤフもまた「戦争」という表現を使っている。ネタニヤフはハマスを壊滅させるためにガザでの侵攻を続けている。今度は、ヒズボラの壊滅である。ヒズボラの軍事力は、ハマスよりもはるかに大きい。そして、それは地上戦へと道を開く。

国内の支持率は上昇しても国際社会では積極的に支持されないネタニヤフ

 25日、イスラエル軍のハレビ参謀総長は、今回のヒズボラへの攻撃は、地上作戦への準備だと述べた。今回の攻撃は、ヒズボラの指揮命令系統を寸断し、その軍事力を大きく削いでいる。それは、イスラエルにとっては、地上侵攻を行って、徹底的にヒズボラを叩くのに絶好の状況となっている。イスラエル軍は、1万人規模の2個旅団の予備役を招集した。

 レバノンは、実効的に全土を支配する政府が存在しておらず、地上戦を阻止する能力もない。国家と国家の戦いではなく、国家と非国家集団との戦いであり、その意味では「戦争」という用語は適切ではない。

 ガザで無辜の民を多数殺戮したとして、ネタニヤフに対する国際社会の批判は強まるばかりである。レバノンのポケベル爆弾で多数の民間人が死傷しており、この点でもネタニヤフは国際世論的に守勢に立たされている。また、レバノン南部に住む9万人以上の住民が避難民として北部に逃れている。

9月26日、レバノン南部サラファンドのアラエディン病院で写真におさまる5歳の少年。イスラエル軍の空爆で傷だらけになった顔面が痛々しい(写真:AP/アフロ)
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 アメリカのバイデン政権も、エスカレーションを望んでおらず、苛立ちを強めている。しかし、バイデンには、もはやネタニヤフを抑制する力がなさそうである。大統領選の最中、イスラエル批判を強めれば、ユダヤ系有権者、イスラエル・ロビーの反発を受け、それはハリス候補の立場を危うくする。