宮内省内匠寮の技師たちの力量を知る

「建物公開2024 あかり、ともるとき」展示風景 東京都庭園美術館 妃殿下居間照明

 朝香宮邸2階は、宮内省内匠寮のデザインによる照明がメイン。これが、なんとも微笑ましい。というのも、おそらく当時の日本の職人にとって、アール・デコはまったく馴染みのない未知の様式であったはず。それを何とか本場のものに近づけようと、研究と努力を重ねて製作に挑んだ。

 例えば、妃殿下居間のボール型のシャンデリアは、フランスのインテリア雑誌『アール・エ・デコラシオン』に掲載されたジュネ・エ・ミション(Genet et Michon)のシャンデリアに酷似。雑誌を参考に製作したのだろうが、「惜しいんだけど、なんだかちょっと違う」感じ。当時の日本の職人たちの苦心が垣間見えるような気がして、興味深く鑑賞できた。

「建物公開2024 あかり、ともるとき」展示風景 東京都庭園美術館 妃殿下寝室照明

 ほかにも、宮内省内匠寮による力作は多数。妃殿下寝室には昇降機付きの照明を採用。取り付けられた滑車を利用して電流コードが伸びたり巻き上がったりする仕組み。妃殿下は手動で昇降を操作していたと考えられている。

「建物公開2024 あかり、ともるとき」展示風景 東京都庭園美術館本館 姫宮寝室前廊下照明

 姫宮寝室前廊下照明は、「旧朝香宮邸の照明と言えばこれ」と思い浮かべる人も多いのでは。赤色、薄青色、濃青色、緑色、白色の5色のガラスが嵌められたペンダントライトで、何ともかわいらしい。よく見ると、電球を交換するための開閉部が備えられており、使いやすさも考慮されていることがよく分かる。日本の職人の技は、やはり素晴らしい。

「建物公開2024 あかり、ともるとき」展示風景

 建物公開展では恒例となった再現展示も見逃せない。テーブルや椅子、クローゼットなど、宮廷時代に使用されていた家具が設置され、往時のムードに浸ることができる。また本展では建物3階にあるウインターガーデンも特別公開。黒と白の市松模様の床が印象的な小部屋で、当時は温室として設けられたという。大きく取られた窓越しに秋の日差しを浴びながら、心地いいひとときをしばし楽しみたい。

 

「建物公開2024 あかり、ともるとき」
会期:開催中~2024年11月10日(日)
会場:東京都庭園美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし10月14日、11月4日は開館、10月15日、11月5日は休館
お問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600