何百万円もの借金を背負って社会人生活をスタート

 女性は「今の状態では10万円なんて絶対ムリ」と言い、「家賃の負担や奨学金の返済がある上、光熱費、食費も上がってきていて3万円を積み立てるのが精いっぱい」と悔しがる。

 少子高齢化で自分たちの世代は「公的年金にはほとんど期待できない」と、老後資金作りのためにNISAを始めた。しかし、「積立額を増やせないままだと“周回遅れ”になる」と危機感を募らせている。

 家賃は仕方ないにしても、奨学金については、もっとよく考えてから利用すべきだったという反省がある。

「祖父からの援助もあり、奨学金なしでもやっていけたかもしれない。奨学金はそもそも“負債”であって、何百万円もの借金を背負って社会人生活をスタートしなければならないという自覚がなかった」

 近年は社会問題化した教育格差や奨学金の返済難への対策として、キーエンス、ソフトバンクといった企業の財団や自治体などによる給付型奨学金が充実してきているが、女性たちの世代が“隙間”となって放置されていることには不公平感を覚えているという。

 そうした中で気になっているのが、企業が社員の奨学金の一部を肩代わりしてくれる奨学金返還支援(代理返還)制度だ。

 制度が広まったのは、2021年から奨学金を借りた社員を介さず企業が日本学生支援機構に直接送金できるようになったのがきっかけだ。新聞報道によると、制度の導入企業は2021年4月末時点で65社に過ぎなかったが、2024年5月末には2000社を突破した。

企業が日本学生支援機構に直接奨学金を返済することが可能になった(出所:独立行政法人日本学生支援機構)