田代ダム完成以来100年、先人たちの知恵

 トンネル工事から発生する土砂の残りの10万立方メートルは、さらに13キロメートルほど下った藤島地区に盛土される計画だ。これも自然環境への配慮として、かつて水力発電開発の際に利用された地点を選んでいる。ただし重金属などを含む要対策土ということで、その対応についてはいまJR東海と県の間で協議が続いている。

 重金属といっても外から持ち込むのではなく、トンネル工事で発生する自然の土砂由来のものであるが、周辺の環境に影響しないよう、JR東海は二重遮水シートを敷くなどの対策を施すとしている。これを認めないとすれば、100キロメートルも離れた処分場までトラックで輸送することになると報じられているが、それよりも、私にはこの藤島地区への盛土が現実的な解決策に思える。

 大井川上流域の開発を巡っては、田代ダム完成以来、100年近くにわたり、多くの先人が険しい地形を前にして知恵を絞ってきた。盛土の計画についても協議が順調に進めば、ほどなくリニアが走る日が来るだろう。次の100年の幕開けを飾るにこれほど相応しいものはない。