毎年、東京ドーム1杯分の土砂が流れ込む

 種明かしをすると、この橋ができた当初である昭和37年には、川はこの25メートルほど下を流れていた。だがその後、土砂が押し寄せて溜まり、今ではもうこのあたりはすっかり埋まってしまった。もうすこしで橋も飲み込まれてしまいそうに見える。

 これだけ大量の土砂がどこから流れてきたか。

 それはこのすぐ上流の赤崩(あかくずれ)までいくとよく分かる(写真3)。

【写真3】赤崩。写真上の方にある峠の直下から土砂が剥き出しになっていて、いったん沢で細くなって、最後に広がっている。手前で土砂が平らになっている部分は畑薙第一ダムのダム湖

 ここは巨大ながけ崩れ現場といったところだ。この赤崩とそのすぐ上流にあるボッチ薙(なぎ)の2カ所だけで年間14万立方メートルもの土砂が発生している。

 さらにその上流からの分も含めると、畑薙第一ダムに流れ込む土砂の量は年間90万立方メートルもあるとのことだ。東京ドームの容積が124万立方メートルだから、毎年、それに匹敵する莫大な量が流れ込んでいるわけだ。

 この大量の土砂のために、畑薙第一ダムは2022年のデータによると貯水容量の50%がすでに失われているという。とはいっても、もともと建設時には1億立方メートルも容量があったので、今後すぐに水があふれてしまうことはない。

 かつて昭和30年代から40年代にかけては建築や埋め立てのために年間100万立方メートルを超える土砂を大井川から採取していたこともあったが、いまは行われていない。

 それでどうするかと言えば、できるだけ土砂が発生しないよう、沢に沿って砂を止める砂防ダムや砂防堰堤を建設し、他方では、溜まってしまった砂をさらう浚渫工事をしている。

 井川ダムよりやや下流にある長島ダムでは、溜まった砂を浚渫し、大井川河口近くの海岸にまでトラックで運んで、砂浜の造成に用いている。

 というのは、ダムができたことで川から砂が供給されなくなったのに、砂浜は波や海流によって浸食され、どんどん失われているからだ。