宮中で評判も彰子には理解不能だった『源氏物語』

 興福寺の対応に疲弊した道長だったが、ドラマではそんな道長の様子を見て、まひろ(紫式部)が気の毒そうにこう声をかけている。

「お疲れでいらっしゃいますね」

 道長は「大したことはない」と答えながら、一条天皇と彰子の仲についてまひろに相談し始めた。『光る君へ』では、まひろと道長はずっとひそかに惹かれ合ってきた。彰子のために物語を書くという役目をまひろに与えたことで、内裏でこうして堂々と会えるのだから、興福寺の僧と渡り合うエネルギーも湧いてくるというものである。

 今回の放送では、紫式部が書いた『源氏物語』が評判を呼び、どんどん読者が広がっていく宮中の様子が描かれた。

 読者が増えて反響が寄せられれば、筆もますますさえるはず。当初は、内裏のバタバタした中で書くのに苦心したまひろだったが、発想を変えれば、読者からの感想がすぐに伝わってくる環境だ。今後ますます執筆は快調に進むことだろう。

 ただ、今回の放送では、彰子が『源氏物語』について「面白さが分からぬ」と悩み、作者のまひろに相談するというシーンがあった。史実においても、『紫式部日記』によると、彰子は紫式部に漢学を学ぼうと積極的に働きかけていたというから、博識な一条天皇に釣り合うようにと、努力していたのだろう。

 ただ、ドラマで彰子が『源氏物語』を理解できないのは、教養よりも人生経験が不足しているからだろう。「男たちが言っていることも分からぬし、光る君が何をしたいのかも分からぬ」と戸惑いを見せた。

 一方、一条天皇はすっかり『源氏物語』に夢中だ。今後、彰子が一条天皇への思いを募らせるにつれて、『源氏物語』への理解も進んでいくのかもしれない。2人をつなげる『源氏物語』に、まひろがどんな思いを託すのかも見どころの一つとなりそうだ。