桂場が竹もとで「もう2度と権力好きのジジイたちに好きなようにはさせない!」(第70回)と、政治家に怒っていたのは記憶に新しい。

 原爆裁判中の113回には「政治家が言外に早く終わらせろと言っている」「ふざけやがって」と憤った。やはり政治家は嫌いなのである。

穂高教授の「君もいつかは古くなる」のセリフが伏線に

 しかし、桂場は自分が政治家のように横暴な権力になってしまう。寅子の大学の恩師で桂場とも親しかった穂高重親(小林薫)は、死を前にして「君もいつかは古くなる」(70回)と寅子に言ったが、これは桂場が老いてしまうことの伏線だろう。

 石田さんの軌跡は桂場と重なり合うため、7月の段階でブルーパージがドラマで描かれる可能性を書いた。すると、SNSで「さすがに無理だろう」と指摘された。内容がセンシティブだと受け止められた。

 しかし、吉田氏や制作統括・尾崎裕和氏(44)は腹の括り方が違う。朝鮮人差別問題、同性愛問題、夫婦別姓問題にも踏み込んだ。国の非を厳しく突いた原爆裁判も描いた。ブルーパージも出来ないはずがない。

 そもそも事実に反する物語ではないのである。自主規制する作品があまりに多いため、近年は観る側のほうがドラマに限界を設けてしまっているのだろう。