比類ない3つの力

 あと何年かしたら名乗りを上げようと考えている向き(政治評論家のタッカー・カールソンがそうかもしれない)も同じ問題にぶち当たる。

 トランプは政治家としてほとんど唯一無二の大変な力を持っている、という問題だ。その大変な力は主に3つあると筆者は考える。

 最も明白なのはスター性だ。

 どんな国でも、スター性を備えた政治家は1世代に1人か2人しか出てこない。全くいない時もある。

 議論を主導せざるを得ない場合、かつ人々の注意をそらしてくれるカリスマ的な指導者がいない場合、極右の政策を訴えることは難しくなる。

 刺激が強すぎるからだ。

 2番目に挙げられるのは、心情的なサンクコスト(埋没費用)と呼べそうなものがあることだ。

 2016年頃からトランプに入れ込み、そのせいで友人や親戚、ソーシャルメディア上の議論の相手との関係が破綻した有権者にとって、トランプを見捨てることは個人的な敗北になる。

 新しい指導者は、トランプの思想にどれほど忠実であっても、そうした有権者の支援までは引き継げない。

 だから誰が後継者になろうとしても、「あなたは本当のお父さんじゃない」というような雰囲気が必ず漂うわけだ。

 3番目の強みにして、トランプが持っている優位性のうち最も論理的でないものは、無能だと思われていることだ。

 共和党内には、トランプは怠け者だしメチャクチャ過ぎるから取り返しの付かないことなどできないとの指摘がある(2021年1月6日までは、半分はその通りだった)。

 トランプ主義に沿ったものの見方と行政手腕を併せ持つ政治家がいたら、支持を得る一方で失うことになるだろうし、有権者を感心させる一方で逆に怖がらせてしまうことになる。