ロシアから中国に天然ガスを送るため、2019年に天然ガスパイプライン「シベリアの力」が開通した。ロシアは、モンゴル経由でロシアから中国に伸びる「シベリアの力2」の建設を中国と詳細を詰めている。この全長2600kmのパイプラインが完成すれば、年間500億立方メートルのロシア産天然ガスを中国に輸出できる。ウクライナ戦争で西側の経済制裁を受けているロシアにとっては、貴重な輸出先となる。

ノモンハン事件

 今回のプーチンのモンゴル訪問は、1939年のノモンハン事件85周年の記念行事に招待する形で実現した。このノモンハン事件は、最近の日本ではあまり話題にならないが、ソ連軍とモンゴル軍が協力して日本軍を打ち破った戦いとして、ロシアが宣伝に努めている。

 ロシアは、ウクライナ戦争で西側と対立しており、西側の一員でウクライナを支援している日本もまた敵である。その日本に対して「勝利した」歴史を回顧することによって、戦意を発揚しようという意図が透けて見える。

 では、ノモンハン事件の実態はどうだったのか。

 第二次世界大戦前夜の1939年の春、ソ連の独裁者スターリンも戦争の準備に余念がなかった。

 ヨーロッパではドイツ軍との戦争が想定されていたが、アジアでは日本軍との戦闘を警戒せねばならなかった。スターリンは、アジアにおいて日本軍と戦い、ヨーロッパにおいてドイツ軍と戦闘するという二正面作戦は何としても避けたかった。