法には従わなければならない現実
だが、政府はまだ、マスクが手に入れられない重要な力を持っている。法律を策定し、強制する能力がそれだ。
ブラジルとXの衝突とフランスでのドゥーロフの逮捕はいずれも、ソーシャルメディアが罰を免れる時代が民主的な世界で終わりを迎えようとしていることを告げている。
(権威主義的な世界では、それはそもそも存在しなかった)
ソーシャルメディア企業はますます旧来メディア企業のように規制される公算が大きくなっており、それは高くつく結果をもたらす。
米FOXニュースは昨年、2020年の米大統領選挙に関する陰謀論の報道に端を発する名誉毀損訴訟で、米ドミニオン・ボーティング・システムズに7億8750万ドルの和解金を払わなければならなかった。
Xは陰謀論であふれ返っており、その一部はマスク自身によって宣伝されているものだ。
巨万の富を持ち、エンジニア、起業家としての紛れもない才覚があるにもかかわらず、マスクはそれでも、事業を展開する国の法律には従わなければならない。
ブラジルや英国、欧州連合(EU)、カリフォルニア州、さらには自分の邪魔をしようとするあらゆる人に対してマスクがますます激しい非難の言葉を口にするのは、その現実に気づかされたことによって説明できるのかもしれない。
Xはマスクの力の源泉ではない。
だが、彼の力が限られているところにしるしをつけているのかもしれない。
(文中敬称略)