中国科学技術大学は24年5月、米国輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に加えられた。中国の軍事力強化につながる、米国の量子コンピューティング技術を取得し、核開発計画に関与した、というのがその理由だという。

 大規模言語モデル(LLM)「GeoGPT」を開発する浙江ラボ(Zhejiang Lab)は、24年4月の入札文書で、AWSのクラウドコンピューティングサービスを18万4000元(約373万円)で購入する意向だと記した。浙江ラボはその理由として、中国アリババ集団のクラウドでは十分なコンピューティング能力を得られない、と説明した。

「抜け穴への対応遅れている」

 かねて、「米政府が半導体やAI技術を対象にした輸出規制を強化したとしても、中国企業は米国のクラウドサービスを介して先端技術にアクセスできてしまう」、という問題が指摘されていた。

 米ジョージタウン大学安全保障・先端技術研究センター(CSET)の研究員であるエミリー・ワインスタイン氏は「中国企業がエヌビディアのA100にアクセスしたかったら、それはどのクラウドサービスプロバイダーからでも可能だ。(現時点では)完全に合法である」と述べていた。

 今回、米下院外交委員会のマイケル・マコール委員長は「この抜け穴は長年の私の懸念事項で、対応がかなり遅れている」と、ロイター通信に語った。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの米メディアは23年、バイデン政権が中国企業による米国のクラウドコンピューティングサービスへのアクセスを制限する準備を進めていると報じていた。これにより、アマゾンや米マイクロソフトなどは、高度なAI半導体を使用するクラウドサービスを中国企業に提供する際、事前に米政府の許可を得る必要が生じる。

 米国では24年4月、米国技術への遠隔アクセスを規制する権限を商務省に与える法案が議会に提出された。クラウド企業の顧客に関する禁止事項を定める権限を商務長官に与えるものとなる。ただ、ロイター通信は、これがいつ、そして実際に可決されるかどうかは不明だ、と報じている。

 AWSの広報担当者は「商務省が新たな規制を検討していることは承知している。当社は事業を展開している国の適用法をすべて順守している」と述べている。