(写真:AP/アフロ)

 中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が、新たなAI(人工知能)向け半導体を近く発表する計画であることが分かった。米政府による制裁を克服し、中国市場で米エヌビディア(NVIDIA)との競争を激化させるという。

次世代品「昇騰(Ascend)910C」

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)英ロイター通信が関係者の話として報じた。

 報道によると、ファーウェイはここ数週間、「昇騰(Ascend)910C」と呼ぶ半導体のテストを行っている。中国のAI向け半導体では、現行の「同910B」が最も先進的だといわれるが、これを上回る次世代品と位置付けている。

 動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)の親会社である北京字節跳動科技(バイトダンス)やIT(情報技術)大手の百度(バイドゥ)、国有通信最大手の中国移動(チャイナモバイル)などが、910Cの調達について、初期段階の協議をファーウェイと行っている。関係者によると、これら初期の交渉では7万個の発注が見込まれ、その総額は約20億米ドル(約2900億円)になる可能性がある。ファーウェイは2024年10月の出荷開始を目指しているが、最終的な購入数や納期は変更される可能性がある。

 WSJによれば、新型AI半導体の開発は、米国の規制により、エヌビディアが中国に最先端品を供給できなくなったことを受けたものだ。ファーウェイは、その穴を埋めたいと考えている。一方、エヌビディアは米国の対中輸出規制の技術基準を下回る製品を開発・投入し、中国市場で事業活動を継続している。

NVIDIA、対中輸出規制強化で規制回避品

 米商務省は22年10月、AI向け先端半導体を中国などの「懸念国」に輸出することを原則禁じた。これにより、生成AIなどのAIシステムで業界標準となっているエヌビディア製GPU(画像処理半導体)「A100」と「H100」の中国への輸出ができなくなった。そこで同社は、規制基準を下回る性能のGPU「A800」と「H800」を開発し、中国などで販売を再開した。

 しかし、バイデン米政権は1年後の23年10月に規制強化を発表。中国などに対する米国製先端半導体・装置の輸出規制対象を広げた。これにより、A800とH800も輸出できなくなった。