その後エヌビディアは、米政府が新たに定めた性能基準を下回る3種のGPUを開発した。3種とは「HGX H20」「L20 PCIe」「L2 PCIe」である。これらのGPUは、AI向け最新機能の多くを搭載しているが、一部のコンピューティング能力が抑えられている。

 一方、同社は24年3月に開いた開発者会議で、次世代GPUシリーズ「Blackwell(ブラックウェル)」を発表した。そのうちの「B200」は、チャットボットのようなタスクにおいて、前モデルに比べて30倍の高速性を実現する。

 ロイター通信によると、エヌビディアはB200の中国向けモデル「B20」の市場投入準備を進めている。中国販売パートナーの1社である浪潮集団(Inspur Group)と協力している。関係者によれば、B20の出荷は25年4~6月期に始まる見通しだ。

 しかし米政府は、一層の規制強化を目指し、3度目の輸出制限を計画しているとも報じられている。その場合、B20の中国への輸出が困難になる可能性がある。

 これとは対照的に、米オープンAIや米アマゾン・ドット・コム、米グーグルなどは、エヌビディアのBlackwellにまもなくアクセスできるようになる。B200とCPU(中央演算処理装置)コアを組み合わせた「GB200」は、既存モデルに比べて数倍強力だとエヌビディアは説明している。

ファーウェイAI半導体 対中規制強化で出荷遅延か

 ファーウェイの新型AI半導体はこうした状況で開発が進められている。WSJによると、ファーウェイの幹部は、中国の大規模言語モデル(LLM)のほぼ半分が同社製半導体でトレーニングされたと語った。現行910Bの性能はAIモデルのトレーニングにおいてエヌビディアのA100を上回ったという。

 だが米国の対中規制強化が、ファーウェイの出荷を遅らせる可能性がある。ロイター通信は先頃、中国のIT大手やスタートアップ企業が韓国サムスン電子からHBM(広帯域メモリー)を大量に買い込んでいると報じた。

 HBMはエヌビディアのGPUなど、生成AIに利用される高度な半導体に不可欠なメモリーである。ファーウェイはサムスン製HBMを用いてAI半導体を開発している。米商務省は制裁や輸出規制を頻繁に更新しており、24年はHBMに関しても一層厳しい措置が取られると業界関係者は予想している。

 一方、米ジョージタウン大学安全保障・先端技術研究センター(Center for Security and Emerging Technology、CSET)は、「ファーウェイの910シリーズはエヌビディアのA100に匹敵するものの、製造能力や歩留まりの低さなど、大きな問題も抱えている」と指摘する。