巧みにバランスを取ったバイデンの功績

 このように見ていくと、最近の大統領のなかでは、バイデンが最も巧みにバランスを取ってきたことが分かる。

 ブッシュ的な冒険は全くなかったが、それは特に難しいことではない。

 大事なのは過度に修正しすぎないこと、つまり米国は衰退しているとの言説のままに、まだ力のある大国を臆病な国にさせなかったことだ。

 バイデンが欧州で見せた強気な姿勢から検討していこう。

 2021年の終わり頃、バイデンはロシアがウクライナを攻撃するつもりであることを知り、世界中にそのことを知らしめた。

 そして侵略国の邪魔をするのに十分な武器を被害国に2年半以上提供し続けている(本当なら、それ以上のこともできただろうが)。

 バイデンが大統領に就任した時には組織の存在理由を探し回っていた北大西洋条約機構(NATO)は新たな加盟国を受け入れたうえ、既存の加盟国も軍備を強化している。

 米国の軍事力を増大させるこの同盟は、寿命を少なくとも1世代分延ばした。

 この欧州への注力によりアジアへの取り組みが疎かになったかと言えば、そうではない。

 アジアでは米国、英国、オーストラリアによる安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」が米国の影響力を強めており、日本を近々取り込む可能性がある。

 日米とオーストラリア、そしてインドからなる「Quad(クアッド)」は初めての首脳会合を開催した。

 フィリピンやベトナムも米国に近づいた。

 台湾についてのバイデンの声明は極端なほど強硬だった(共和党のアジア第一主義者らはこれをトランプの発言と比べるかもしれない)。