力を過信したブッシュと委縮しすぎたオバマ

 ジョージ・W・ブッシュは米国の力がイラクやアフガニスタンで成し遂げられることについて、壮大だが最終的には破綻を招く構想を抱いた。

 バラク・オバマは萎縮しすぎた。

 世界の流れを方向付ける米国の物質的な能力、さらにはその倫理的な力に疑問を感じたことから、ロシアがクリミアに侵攻した時に介入をためらった。

 また、オバマはシリアでの化学兵器の使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」だと示しておきながら、結局動かなかった。

 この気後れが西側の敵対勢力をその後数年にわたってどれほど強気にしたかについては、想像するしかない。

 ドナルド・トランプはどうか。

 共和党との関係がどうであれ、トランプはブッシュよりもオバマに近い。その自国優位の思想がどんなものであれ、衰退論者であることは間違いない。

 経常収支の赤字、安全保障にタダ乗りしている同盟国、武力介入などを毛嫌いしていることは、米国の国力を注意深く使わなければならない減りゆく資源と見なす人の考えだ。

 共和党内でトランプに最も近い「アジア・ファースト(アジア第一主義)」派は、ウクライナのために切る小切手は希少な資源のムダ遣いであり、その資金はもっと大きな中国の脅威に備えて取っておくべきだと考えている。

 この考え方には皮相的な「常識」がある。

 だが、どこかで軍事力を誇示しておけば、ほかの場所でもその効用を享受できること(例えば米国がウクライナを見放したら、アジアにおける米国の威信は高まるだろうか、低下するだろうか)を認識できていないうえに、米国の力に対する悲観論もにじみ出ている。