「推し活」が変える「寄付やボランティアをしない日本人」

「世界寄付指数(World Giving Index)2024」において、日本はワースト2位という不名誉な評価を受けている。これは「寄付をしたか?」「ボランティア活動をしたか?」などの質問に対する回答をイギリスの慈善団体Charities Aid Foundationが取りまとめ、国別ランキングにして発表しているものだ。

 対GDP比で見ても日本は先進国の中で圧倒的に寄付額が少なく、寄付文化が根付いていないことが、NPO等が社会課題解決を進めるうえで大きな障壁となっている。寄付市場が小さく、ボランティア活動等に参加する人も少ない日本において、「推し」関連の寄付や「ファン・アクティビズム」が台頭すれば、ソーシャルセクターにとって希望の光となる。

 ファンダムは、単なる「応援者」から「社会変革の原動力」へと進化を遂げつつある。そして「推し活」が持つ影響力は、今後ますます大きくなっていくはずだ。このエネルギーをいかに活用できるかが、今後の社会課題解決の鍵となるだろう。

「推し活」市場でビジネスを展開する企業は、自社コンテンツを通じた社会貢献活動にファンが参加できるよう設計することで、そのインパクトを何倍にも増幅できる。NPO等のソーシャルセクターは、ファンダムに潜む資金・人財面での大きなポテンシャルに目を向け、積極的に連携することで強固な支持層を獲得できる可能性がある。

「推し活」は、私たちに日々の楽しみや生きがいをもたらし、生活を豊かにしてくれるものだ。一方で、本連載で見てきたように、過度にのめり込めば「推し活依存」を引き起こす可能性もあり、深刻なリスクにもつながりうる。

 特にコンテンツを提供する企業サイドは「推し活依存」を予防する責任を負い、健全な「推し活」市場を築いていくべきだ。また、同時に「推される側」の受けるプレッシャーや誹謗中傷など心身のリスクに対するケアも忘れてはならない。

 健全で倫理的な「推し活」の実現を前提としたうえで、この莫大なエネルギーと熱量を「社会に良い」「エシカルな」方向に向けられれば、社会課題の解決を加速させられる可能性があることも確かだ。「推し」や自分のための喜びが「社会のため」になる、新しい「推し活」の好循環が、今後一つでも多く生み出されることに期待したい。