強固な連帯と統率が生み出す「ファン・アクティビズム」

「同じ推しを持つファン」の連帯の強さと統率力が社会変革の原動力になりうることから、近年では「ファン・アクティビズム(ファンダムによる社会運動)」という概念も注目されている。

 その元祖とされるのが、「ハリー・ポッター」シリーズのファンによって2005年に設立された非営利団体「Fandom Forward」だ。

“fans into heroes(ファンをヒーローに)”というビジョンの下、ファンの情熱とポップカルチャーの力を活用した社会変革を目指して、気候危機や人権、ジェンダー課題等に関する多くのプロジェクトを世界的に展開している。

 例えば、ハリー・ポッターシリーズの映画化を手掛け、グッズ等の製造も行うワーナー・ブラザーズに対して、オリジナルのチョコレート製品をフェアトレード原料に切り替えるよう要請するプロジェクトを立ち上げた。

 40万人のファンが署名等の行動を起こし、最終的にはシリーズの著者J.K. ローリングや、奴隷制度撤廃に取り組むNGOを巻き込んだ大規模な活動に発展。2014年、ワーナー・ブラザーズに「チョコレート製品をフェアトレード認証等のサステナブルな原料に切り替える」と宣言させることに成功した。

 そして今、こうした「ファン・アクティビズム」をリードする共同体として、最も存在感を増しているのがK-POPファンだ。BLM運動に対するBTSファンの寄付活動についてはすでに触れたが、2020年当時、SNS上では寄付に留まらないアクティビズムも同時に生まれていた。

 白人至上主義者たちが投稿した「#WhiteLivesMatter」というハッシュタグや人種差別的な発言を撃退すべく、K-POPファンたちがこのハッシュタグを用いて、アイドルの画像や動画などを数多くツイートしたのだ。「#WhiteLivesMatter」のタイムラインを「推し」のアイドルで埋め尽くすことで、人種差別的なツイートを埋もれさせることに成功したという。

 今や「消費者」の枠を超え、社会的影響力を持つ「アクティビスト」へと変貌を遂げたファンダムは、その強固な連帯と統率力で、社会変革の成功体験を世界各地で生み出している。