たった1日で100万ドルの寄付を集めたBTSのファン

 2020年に、BTSのファンたちがたった1日で100万ドルの寄付を集めた実績は記憶に新しい。当時、Black Lives Matter(BLM)運動への支援を表明したBTSメンバーと所属事務所のBig Hit Entertainmentは、100万ドル(約1億900万円)の寄付を行った。

 これに呼応した世界中のBTSファンたちは、SNSを駆使して同額の募金を集めるオンラインキャンペーンを組織し、24時間という驚くべきスピードで目標を達成したという。

「推し活」でつながったファンダムの強い結束力が寄付や社会貢献に向かった時、そのパワーとスピードは、長年にわたり社会課題に取り組んできたNGOを凌駕するほど圧倒的なものになる。

 このように、寄付を通じて「推し」に「名誉」を贈りたい、「推し」と共に社会貢献したい、といったファンの思いを後押しする企業も出てきている。

 韓国の大手芸能事務所・JYPエンターテインメントは、自社のアイドルを応援するファン向けに「JYP Fan's EDMデビットカード」を発行した。ファンがこのカードを利用するごとに、使用金額の一部が難病の子どもたちの支援活動にアイドルとファンダムの名前で自動的に寄付されるというものだ。

 本連載の中でも推し活市場の急拡大について触れてきたが、消費に流れる大量の推し活マネーを寄付市場に上手く引き込めれば、NPOなどのソーシャルセクターにとっては大チャンスだ。ファンダムという強力なファンドレイザー(資金調達人)を味方につけることで、社会課題解決を急加速させられる可能性がある。

 さらに、「推しのため」と「社会のため」を同時に追い求める一部のファンたちは、「推し」本人にも「社会の手本」であってほしい、と模範的な行動を求めるようになってきている。