物価高は新型コロナウイルスの流行、ウクライナ戦争などの要因もあり、最近はインフレ率が2%台にまで鈍化しているが、ハリスは、バイデンの物価対策を拡大するのみであり、それが実効性を持つのか問題である。

 具体的なインフレ対策としては、住宅については、4年間で300万戸を新築する、低価格住宅を建設する会社を税優遇で支援する、住宅開発支援基金を400億ドルに倍増する、住宅を大量購入する投資家への税制優遇を撤廃する、初回購入者の頭金を2.5万ドル支援するという。しかし、このような政策は需要を高めて、かえって住宅価格を高騰させるのではないかと懸念する声もある。

 食品については、価格つり上げを禁止する連邦法を制定する、価格競争を弱める合併・買収に対する監視を強化する、企業が過大な利益を出せないように規制するなどの政策を掲げている。しかし、企業にしてみれば、原材料の高騰で経営が苦しく、利益率も下がっているので、一定の値上げは必要だという。

ハリスの「大きな政府」路線に噛みつくトランプ

 これらの政策について、トランプは、「共産主義者の価格統制だ」と厳しく批判しているが、自由な市場経済で、ハリスの政策が企業活動を萎縮させる危険性がある。そして、それは、既に1兆ドルを超える財政赤字のさらなる悪化を招く。

 財政の過剰な出動は「大きな政府」を意味する。ハリスは中低所得者に配慮し、富裕層から低所得者層への富の配分を図る。

 2021年に時限導入された最大3600ドルの児童税額控除を復活させる、ゼロ歳児の子育て家庭に6000ドルの税額控除を新設する、低所得者に最大1500ドルの所得税控除を行うなどの政策を掲げている。

 また、法人税率を21%から28%へ引き上げる。しかし、それは企業の活動を制約し、世界におけるアメリカ企業の競争力を失わせる。