もう一人の主人公が設定されている。こちらも名優チョン・ウソンの演じるイ・テシン少将である。大統領暗殺事件後、首都警備司令官を担当することになり、クーデターを起こしたチョン・ドゥグァンと対峙するのだ。

 この映画は単に現代史を描いただけでなく、ファン・ジョンミンとチョン・ウソンという、韓国映画界を代表するトップ俳優の演技合戦でもある。最初に二人が遭遇するシーンでは緊張感のなかにファン・ジョンミン一流のユーモアが効いている。全斗煥に似せたハゲ頭、キツい方言、いやらしくタバコを吹かすその姿。二人の絶妙な掛け合いは、映画の一番の見所だ。

チョン・ウソンが演じるイ・テシン
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リアルタイムで描かれるクーデター

 映画はチョン・ドゥグァンがいかにクーデターを起こし、権力を掌握していったかを描く。

 チョン・ドゥグァンとノ・テゴン将軍とのやりとりも面白い。チョン・ドゥグァンの腹心であるノ・テゴンのモデルは、全斗煥の後に大統領を務めた盧泰愚(ノ・テウ)である。

「クーデター計画はうまくいくはずがない」と言うノ・テゴンに対し、チョン・ドゥグァンは「俺の前で失敗するなんて二度と言うな」と迫る。それまで疑心暗鬼だったノ・テゴンは覚悟を決め、チョン・ドゥグァンの吸っているタバコの火をもらい、自身のタバコに火を付ける。ノ・テゴンをまっすぐ見つめ、ニヤリと笑うチョン・ドゥグァン。二人のクーデター計画がここに始まる。ノ・テゴンを演じるのはパク・ヘジュン。顔つきが実際の盧泰愚に似ており、リアリティが増している。