経済分野へ拡大、当面は基幹インフラや半導体など

 そして特定秘密保護法の運用開始から10年になる2024年5月、これに関連する新たな法律が制定されました。「重要経済安保情報保護法」です。

 現代では兵器のハイテク化が格段に進み、安全保障関係の情報ネットワークも急速に進化しています。多発するサイバーテロも大きな脅威です。こうした分野では、情報の大量処理や生成AIなどの技術開発、さらには半導体製造やその供給網(サプライチェーン)といった経済分野の情報が大きなカギを握っています。

図:フロントラインプレス作成
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 ところが、現行の秘密保護法は秘匿すべき情報の対象分野を防衛や外交、テロ関連などとしており、経済情報を対象としていませんでした。新法はこの欠点を補い、経済安全保障を確立させる目的で制定されたのです。

 AI関連などの技術開発は今後、一国だけでは、ますます難しくなると予想されています。中国・ロシアなどを念頭に強固な安全保障体制を日米欧が築くためには、経済分野の秘密保護についても欧米と同じ水準になければならないという点も、新法制定の大きな要因でした。

 重要経済安保情報保護法は、先発の秘密保護法と同じような枠組みで運用されます。同法は、漏えいした場合に日本の安全保障に「支障」が出る情報を対象とし、大臣ら政府機関の長が必要に応じて「重要経済安保情報」に指定します。高市早苗・経済安保相の国会答弁などによると、当面は

①    電気やガスといった「基幹インフラ」などへのサイバー攻撃情報や政府の対応策
②    半導体や蓄電池など重要物資を巡る国際共同研究に関する外国政府の情報

 などが指定対象に想定されています。

 一般市民の感覚からすれば、特定秘密保護法は国家レベルの話であり、遠い世界の話と感じる人も多かったでしょう。しかし、2025年5月に重要経済安保情報保護法が施行されると、そんなことは言っていられなくなるかもしれません。