適正評価の対象者は防衛省・警察が大半

 特定秘密を取り扱うことのできる人は、誰なのでしょうか。

 関係省庁などの公務員すべてが特定秘密にアクセスできるわけではありません。事前のチェックによって「この人物なら秘密を漏らす恐れはない」などと判断された者にのみ取り扱いが許可されます。この仕組みが「適性評価制度」で、先行する欧米では「セキュリティー・クリアランス」と呼ばれています。

 適性評価では、その人の特定有害活動との関わりの有無、犯罪・懲戒歴、薬物の仕様、借入金の状況などが所属組織よって徹底的に調べられます。

 政府の公表によると、2023年の1年間に実施された公務員の適性評価は2万3018件でした。最も多かったのは防衛省の2万60件。警察関係では、都道府県警察職員も含め779件が実施されました。

2013年12月には特定秘密保護法に反対する大規模な集会も開かれた(写真:鈴木幸一郎/アフロ)

 公務員だけでなく、防衛システムの開発など民間人であっても特定秘密を取り扱うケースが出てきます。その場合は、民間人も適性評価を受けねばなりません。2023年には1551件が対象になりました。

 適性評価の対象は本人だけではありません。本人の配偶者(事実婚を含む)、子、父母、配偶者の父母らも対象になります。本人には適性評価の対象者になったことが告知されますが、それ以外の者には告知がないため、配偶者やその父母らは当局から調べられていることもわかりません。

 仮に特定秘密が外部に漏れたらどうなるでしょうか。適性評価にパスした取扱者が故意の場合、懲役10年以下・罰金1000万円以下。過失でも懲役2年以下。取扱者から正当な方法で特定秘密を得た者が漏らした場合は懲役5年以下・罰金500万円以下に処せられます。国会議員であっても、その刑罰の対象です。

 人を欺くなどして特定秘密を取得した場合は、既遂も未遂も刑罰の対象です。既遂は懲役10年以下・罰金1000万円以下。取扱者が故意で漏洩したケースと同じ量刑であり、秘密保持に対する厳しい姿勢を示すものと言えます。なお、秘密保護法の制定時の議論では「最高刑は死刑にすべきだ」との意見もありました。