- 仕事と家事・育児がいずれもジェンダーレスになり、これまでごく少数だった「女性の海外駐在員」が増え、それに伴い「駐夫」(駐在員の夫)も増えてきた。
- 「駐夫」は主夫として、慣れない海外の生活で主に家事・育児を担うことになる。さらに、「妻のほうが稼ぎが多い」という事態も出てくる。さて男の自尊心は? 生き方は?
- 女性駐在員と帯同した男性は、夫婦間の性別役割分担において、新たな夫婦のスタイルを実現した存在だ。彼らの実態をデータに基づいて明らかにする。
(*)本稿は『妻に稼がれる夫のジレンマ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって 』(小西一禎著、ちくま新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
【後編】
妻の海外赴任について行った「駐夫」の葛藤…目の前のレールを走り続ける「男の闇」と決別したワケ
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、どうお考えですか。
賛成 33.5%
反対 64.3%
内閣府が2022年、18歳以上で日本国籍を持つ5000人を対象に実施した「男女共同参画社会に関する世論調査」で、実に興味深い結果が浮かび上がった。
長らく日本に巣くっている「男は仕事、女は家事・育児」という考え方に対し、過半数が「NO」を突き付けたのだ。反対と賛成のあいだに、ほぼ倍の開きがあることにも注目したい。
設問や調査方法が異なるため、単純には比べられないものの、同じ趣旨を尋ねる質問に対し、反対する声は年々高まっている。バブル期終盤の1992年には、反対が31.0%にとどまっていた。その後、次第に上昇し、2007年に52.1%と初めて半分を超えた。2012年、2014年は5割を切ったが、女性活躍推進法が施行された2016年に再び上向き、前回2019年は59.8%だった(図1―1)。
反対する理由(複数回答)を見ると、最も多かった答えは「固定的な夫と妻の役割分担の意識を押しつけるべきではないから」で70.8%。次いで、「夫も妻も働いた方が、多くの収入が得られると思うから」の44.8%、さらに「妻が働いて能力を発揮した方が、個人や社会にとって良いと思うから」(40.0%)、「男女平等に反すると思うから」(35.7%)と続く(図1―2)。