女性駐在員&男性帯同者の増加
企業活動のグローバル化に加え、女性の活躍や人材の多様化に伴い、海外への赴任者は男性に限られなくなっている。企業や団体から国外勤務を命じられ、現地に赴く女性駐在員の増加という動きが見られるのだ。
労働政策研究・研修機構の「海外派遣勤務者の職業と生活に関する調査結果」(2006年調査)によれば、海外派遣者の性別内訳は、男性98.2%、女性1.0%と男性が圧倒していた。帯同者は、女性が99.5%、男性はわずか0.5%だった。
外務省の「海外在留邦人数調査統計平成30年要約版」(2017年10月1日現在)によれば、駐在員とは定めていないものの、海外に長期滞在する民間企業関係者の比率は男性87%、女性13%となっている。
また、女性の民間企業関係者の推移をみると、2015年から2016年にかけて約4.6%、2016年から2017年にかけて約3.5%、それぞれ増加している。データが異なるため、単純比較はできないものの、依然として男性が圧倒的である一方、女性駐在員が増えている傾向が見て取れる。
一方、帯同者をみると、男性が目立ち始めている。一例として、国家公務員による配偶者同行休業制度の活用事例を見てみよう。
人事院のデータによれば、2022年度に同制度を活用した職員は83人で、うち女性が74人、男性は9人である。また、2020年度も、9人の男性が活用した。2018年度の男性活用は3人にとどまっていたことを考えると、男性職員の活用者が増加し、制度として定着していることが分かる。
また、私が米国在住中の2018年に立ち上げたグループ「世界に広がる駐夫・主夫友の会」の例でいえば、発足当時は4人だったメンバー数は、5年を経た2023年秋の時点では150人近くに上っている。
官民いずれにおいても、こうした配偶者同行休業制度がつくられた上、本人のみならず各方面からの理解が広がり、本格的に運用されるようになってきた。そして、女性だけでなく男性の休職制度利用の増加が際立っており、ジェンダーを超えた休職制度の活用が広がっている。
ただし、法律によって制度が担保されているのは、国家公務員や地方公務員、裁判官らに限られている。さらに、休職制度を独自で導入している会社・団体に所属している人だけが使えるという点には注意しておく必要がある。すべての人が対象となっているわけではないのだ。