できる対策を確実に

 さて、そんな緊張状態が続く3月10日(日)の朝9時頃、またしてもスマホから緊急地震速報のアラームが鳴った。市の防災サイレンも、同時にけたたましく鳴り響く。

 ちょうど庭へ出て洗濯物を干していた私は、

「ついに来たか!」

 と身構え、すぐに家の中を覗き込んだ。いつも震度のバロメーターにしている吊り下げ式の照明器具を見るためだ。しかし、思ったほど揺れていない。

 すると今度は、防災無線でなにやらアナウンスが流れてきた。はっきり聞こえないのだが、耳を澄ませると、「津波が来るので、高い所へ避難してください」と警告しているようだ。

 ほとんど揺れを感じなかったのに、いったい何があったんだろう! そんな不安を抱きながら改めてスマホに目をやると、そこには「訓練」という文字が。実はこれ、震度6強の地震と、高さ10メートルの津波を想定した、大網白里市単独による「津波避難訓練」だったのだ。

 まさに現在進行形で群発地震が発生している中、私も含め、事前にこの日の訓練を認識していなかった人たちは、さすがに突然の津波警報に驚かされたようだ。特に、スマホなどを持っていないお年寄りなどは、市から届いた「訓練」というメッセージを確認する術もなく、右往左往したのではないだろうか。

 何より、もしこの時間帯に本物の地震や津波が襲ってきたらどうなるのか? 時期が時期だけに、地震と津波におびえている市民にとっては、かなり紛らわしい訓練だったことは間違いない。

 とはいえ、こうした訓練は大切なので、今後はもっと市民への告知を徹底してから行う必要があるだろう。

 国土地理院によると、今回の地震活動では、房総半島東岸の大原で南東方向に2.1センチの地殻変動が認められているという。

 群発地震はいつまで続くのか、そして予測されている「大きめの地震はいつやってくるのか……。

 その答えは誰にも分らない。しかし、渦中の住民としては、正しく恐れながら万一の事態に備えたいと思っている。

【柳原三佳】
京都市生まれ。ノンフィクション作家、ジャーナリスト。雑誌編集記者を経てフリーになり、主婦業・子育てをしながら、交通事故、司法問題等をテーマに取材・執筆、書籍出版を重ね、講演、テレビ、ラジオへの出演もおこなう。「週刊朝日」等に連載した告発ルポは自賠責や自動車保険査定制度の大改定のきっかけとなる。主な著書に、『開成をつくった男、佐野鼎』『私は虐待していない――検証 揺さぶられっ子症候群』(講談社)、『自動車保険の落とし穴』(朝日新書)、『家族のもとへ、あなたを帰す 東日本大震災犠牲者約1万9000名、歯科医師たちの身元究明』(WAVE出版)、『遺品 あなたを失った代わりに』(晶文社)などがある。また児童向けノンフィクションとして、『柴犬マイちゃんへの手紙――無謀運転でふたりの男の子を失った家族と愛犬の物語』『泥だらけのカルテ――家族のもとに遺体を帰しつづける歯科医が見たものは?』(講談社)がある。なお、『示談交渉人 裏ファイル』(共著、角川文庫)はTBS系でドラマシリーズ化、『巻子の言霊――愛と命を紡いだ、ある夫婦の物語』(講談社)はNHKでドラマ化された。