このときは、建物の損壊や倒木などの被害のほか、停電や断水が発生し、市民生活に大きなダメージを与えた。一部では停電が20日以上も続いた地域があったほどだ。

2019年9月の台風で折れた電柱(筆者撮影)

災害時に車に燃料が入っているか否かは雲泥の差

 我が家は幸い、水道も電気も数日で復旧したが、熱中症の危険が叫ばれるような猛暑の中、たとえ数日であってもエアコンが使えないのは辛かった。低体温症や熱中症は命に危険を及ぼす。

 しかし、車が無事でさえあれば、暖房も冷房も効かせることができるし、スマホの充電だってできる。もっとも身近で手っ取り早い避難所となるのだ。

2019年9月の台風直後の大網白里市内のスーパー。冷凍食品の棚は空っぽだ(筆者撮影)

 実際に、私は東日本大震災の取材をする中で、発災直後、車がいかに初期避難と復興の役に立ったかを多くの被災者から直接聞いてきた。

 拙著『泥だらけのカルテ 家族のもとに遺体を帰しつづける歯科医が見たものは』(柳原三佳著/講談社)では、釜石市鵜住居地区で自らも被災し、自身の患者約200名の身元確認作業を行った佐々木憲一郎氏の過酷な体験談を取り上げた。佐々木氏は、あのときの経験から、今もガソリンタンクが半分になったら必ず満タンにするよう心がけているという。マイカーを所有している人は、平時からガソリンの備えを万全にすることを忘れないでほしい。