安東:そういう不満を抱えていて、わかってもらえていないと思っている相手と近づきたいと思わないですよね。まずは、順子さんの不満を解消していくことと、お母さんとの関わり方を見直していくことが大切だと思います。

壮太:どうすればいいんでしょうか。

安東:そうですね、お二人の間にある感情のわだかまりを解いていきましょう。

さらに奥にあるわだかまりをほどいていく

カウンセリングに行く時間がない夫婦の方たちに、夫婦関係をうまく進めるヒントを毎週綴った安東秀海によるQ&A連載も多くのアクセスがある。

安東:順子さんは、今までで一番怒っている、あるいは悲しかったといえば、いつの頃でしょうか?

順子:やっぱり結婚式の時ですね。お義母さんに言われた時に、夫はヘラヘラ笑っているだけでした。

安東:では、その時の「私」をイメージしてみてください。

順子:はい。

安東:壮太さんも、できるだけ当時のことを思い出して。自分が見てきた世界とは違って見えるかもしれませんが、今、目の前にはお義母さんの言葉で傷ついた順子さんがいる、と思ってください。

壮太:はい。

安東:では、気持ちの準備ができたら、壮太さんから「あの時はごめんね」と言ってくださいね。

壮太:あの時は辛い思いをさせてごめんなさい。

安東:順子さん、壮太さんが謝っていますが、どんな感じがしますか?

順子:はい、ちょっとだけ気持ちが落ち着きました。でもまだ怒っていますけどね。

安東:怒っているんですね。いいことだと思います。では、今度は順子さんから言いたいことがあったら言ってください。

順子:何よいまさら、謝ったら済むってことじゃないんだよ。

安東:はい、いいですね、怒り、出てますね。じゃあ、今度はその怒りの下にある感情を探ってみましょうか。

 順子さんは、何にそんなに怒っているんでしょう? そこにはどんな気持ちがあると思いますか?

順子:何に怒っているか、ですか……。そうですね、怒っているのは、結婚式なのに夫が私を助けてくれなかったことですね。それがムカつきますね。

安東:怒っているだけですか?

順子:怒っているだけ? いや、違いますね。怒っているというか、なんだか悲しいです。結婚式なのに夫が私を助けてくれなくて、そのことが悲しいです。

安東:ありがとうございます、順子さんは悲しいんですね。壮太さんは、この悲しみを理解しておく必要があると思います。怒っているからごめんなさい、ではなく、悲しませてごめんなさい、と理解しておきましょう。

壮太:わかりました。ずっと妻に拒否されて、なんでこんな目にあわなきゃいけないんだって僕もちょっと怒っていたんですけど、意味もなくそうなってたんじゃなかったのかも、って理解できました。

 あと、妻が悲しかったんだって言った時、僕もずっと悲しかったのかもって思いました。

順子:え、そうなの?

安東:ご夫婦が問題と直面している時って、やっぱりお互いが傷ついているんだと思うんです。本当は仲良くしたいし、大切にもしたい。

 でもそれができないから。そんな時には、傷ついているのが自分だけじゃなくて、相手も傷ついていたのか、と気づけると、見え方も随分変わってきます。 (完)

『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』(安東秀海・著)より一部抜粋)