安東:お腹ですね。じゃあ、そのモヤモヤはどんな色をしていますか?

順子:…グレー? ですかね。

安東:お腹のあたりにグレーの塊があるんですね。それは重いでしょうか? 軽いでしょうか? 触ってみるとどんな感じがしますか?

順子:触ってみると、ふわふわしています。重さは……、なんだか重いですね。

安東:ふわふわしているのに重いってちょっと不思議ですね。その感覚ってこれまでにも感じたことはありますか? あるとしたらそれはいつ、どんな時ですか?

順子:あ、何か思い出しました。

 この感覚、結婚式の時にもあったような気がします。結婚式の時に義理の母から「赤ちゃんたくさん産んでね」と言われたんですが、これってすごく失礼ですよね。その時に感じたモヤモヤと、同じ感じがします。

安東:結婚式の出来事が思い出された? 壮太さんはそれ、ピンときますか?

壮太:はい、これまでも何度か聞いたことはあるんで。でもそれ、失礼とかじゃなくて、母はただ孫の顔が早く見たいってことを言っただけだと思うんですけど……。

順子:それはわかるよ。でも結婚式で、わざわざ言うことじゃなくない? 私の両親もいたのに。

 あと、長女が生まれた時もそう。「あら女の子だったの」って言われてすごく嫌でした。次女の時も性別がわかって最初に思ったんです。「また女の子なの」って言われるんだろうなって。

壮太:でも、そうは言ってないじゃない。

順子:言ってないよ、でもきっとそう思ったんだろうなってこと。そもそもあなたはいつもそうやってお義母さんをかばうでしょ? それが嫌だって何度も伝えてきたじゃない。でもこの人、全然わからないんですよ。

安東:なるほど、壮太さん。これ、何が問題なのかというとですね、順子さんから見て、壮太さんがお義母さん側に立っているように見える、ということなんだと思うんです。

 つまり、「私がお義母さんのことを嫌だと言っている時に、あなたは私サイドに立ってくれてないよね」と感じている、ということなんですが、順子さん合っていますか?

順子:はい、そうなんです。いつも彼は向こう側にいて、私と娘たちの反対側にいるみたいに思えていました。

壮太:え、そうなの?

安東:はい、そうですね。味方のポジションにいない、というのは時に敵にさえ見えてしまう場合がありますが、それはピンときますか?

壮太:はい、もし妻がそんな風に僕を見ていたとしたら、確かに敵に見えちゃったかも、というのは理解できます。

順子:ありがとうございます。二人で話していると、このニュアンスが全然伝わらなくて、だからもうこの話はしないようにしていましたし、私たちの味方じゃないんだって線引きしていたようにも思います。

安東:それが心の中に溜まっていたモヤモヤなのかもしれませんね。

壮太:母に不満を持っているのは薄々わかっていましたが、それが夫婦の関係にこんなに影響するとは思っていませんでした。

順子:それって私の気持ちがわかってない証拠だと思う。