「親ガチャ」で教育の質が決まってしまう

赤林:個々の学校法人の事情は異なりますから、一概には言えません。外部からの想像で申し上げると、生徒を受け入れる側の学校の論理が反映された動きだといえるのではないでしょうか。

 というのは、学校側にとって、入試は大変な業務です。入試問題の作成から受験会場の設営、採点などで膨大なリソースが必要となります。中高一貫校では、おおむね高校からの入学者は1〜2クラス分ほどしか生徒がいません。少数の生徒を高校から入学させ、中学から上がってくる生徒と交流させたり、先生をうまく配置したりする手間を考えると、高校入学枠を廃止し、中学入学枠を増やした方が、コスト・パフォーマンスが高いというのは理解できます。

(写真:milatas/Shutterstock.com

──私立中高一貫校が高校生からの受け入れをやめる動きがさらに広がると、ますます早期教育に歯止めが効かなくなる可能性があるということですか。

赤林:そもそも、なぜ教育格差が問題なのかを考える必要があります。親が与える教育により、子どもの将来の職業や収入が大きく左右されるという事実、そしてそれは当然だ、というコンセンサスが世間で形成されてしまっていることが、大きな問題です。

 公教育への不信感が広がっています。教員の採用倍率は低下の一途をたどっていますし、最近とくに重視されている英語教育やSTEM教育への対応も後手に回っています。そうした中、「ウチの子にはできるだけよい教育を受けさせてあげたい」と思うのは、親としては自然な感情でしょう。

 教育格差を是正するための最重要施策は、公教育の質を上げることです。このままでは、生活に余裕があって、中学受験できる層だけが質の高い教育を受けられる、という状況が続いてしまいます。昨今、ネットで話題の「親ガチャ」という言葉も、こうした現実を受けたものなのでしょう。