SNSなどで「増税メガネ」と揶揄された岸田文雄首相。肝煎りの定額減税も支持率回復にはさほど効果が出ていない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 6月から適用が始まった1人4万円の定額減税制度。岸田文雄政権肝煎りの施策だが、SNSなどでは「制度がよく分からない」「減税の実感が湧かない。コロナ時のような給付金の方が良かった」と評判はいまひとつのようだ。挙げ句、1人で8万円の減税を受けられる“二重取り”が発生することが判明した。

 鈴木俊一財務相はこれを認めつつ、企業や自治体の負担に配慮して超過分の還付は求めないことを明言した。財務相の発言を受け、「一部の人だけズルイ」「二重取りは不公平」といった怨嗟の声が上がっている。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

年収が100万円超〜103万円以下で扶養に入っていると“二重取り”可能

 定額減税の“二重取り”が発生するパターンはいくつかある。例えば、働きながら年金を受給している人が年金と給与の両方から定額減税を受けた場合などだ。

 今回批判の矛先が向けられているのは、年収が100万円超〜103万円以下の人の二重取りだ。収入のレンジは狭いが、この層は一定数存在すると考えられる。

 給与収入を得ているパートやアルバイトの場合、収入額が基礎控除48万円と給与所得控除(給与所得者の必要経費として収入に応じて一定額を差し引く制度)55万円を足した103万円を超えなければ所得税がかからない。さらに、その人の配偶者も配偶者控除が受けられ課税所得が軽減される。配偶者控除の基準となる103万円を家族手当の妻の収入制限とする会社も少なくない。

 これらのメリットを生かすべく、103万円を超えないように労働時間をセーブする女性たちが少なからずいる。女性の働き方の「103万円の壁」だ。

 2023年10月からは「年収の壁・支援強化パッケージ」が始まり、厚生労働省が企業に配偶者への家族手当の見直しを促すなど、女性が何段階かの年収の壁を超えて自由に働けるよう公的支援が本格化している。半面、小売業や製造業などパートの多い現場では依然、扶養家族でいるために年収が103万円を超えないよう調整している人が散見されるという。

 では、なぜこの層が“二重取り”になってしまうのか。定額減税の仕組みを交えながら説明しよう。