日本外国特派員協会で会見した当時の伊藤詩織氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)日本外国特派員協会で会見した当時の伊藤詩織氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 2017年10月24日、日本外国特派員協会で、ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏から性的暴行を受けたと会見を開いた。その後、しばらく事件の報道が過熱し、伊藤氏と山口氏の両サイドが様々な情報を発信した。山口氏との裁判の後にも、伊藤氏は、SNS上での誹謗中傷に対して提訴している。

 伊藤氏をめぐる一連の裁判はその後どうなったのだろうか。7月9日、「伊藤詩織さんの裁判報告会」が都内で行われた。主催者は『伊藤詩織さんの民事裁判を支える会 Open the Black Box』。以下、多少の補足説明を交えながら、報告会で配布された資料と公開された情報を記したい。(長野 光:ビデオジャーナリスト)

TBS記者に対する1100万円の損害賠償訴訟の顛末

 伊藤氏は2017年の会見後、山口氏の件を含め、4つの裁判で争った。いずれの裁判も伊藤氏の勝訴で終わった。

■裁判①:山口敬之氏への訴訟(終結まで約5年)

 2015年4月3日、伊藤氏は就職先の紹介を求めて、元TBS記者の山口氏と恵比寿で食事をした。その後、酒を飲んだ意識のない状態で、港区内のホテルで性的暴行を受けた。同年同月、伊藤氏は山口氏に対する準強姦容疑で警視庁に被害届を提出している。

 2016年7月、東京地裁は嫌疑不十分で不起訴決定としたが、2017年5月18日に「週刊新潮」で本件が記事化された。そして5月29日、伊藤氏が検査審査会に審査を申し立て、司法記者クラブで会見を行った(その後の流れは下記の通り)。

【2017年9月28日】ホテルで意識のない時に山口氏から性暴力を受けたことに対して、伊藤氏が望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、山口氏に対し1100万円の損害賠償を求め提訴した。

【2017年10月18日】『Black Box』(文藝春秋)を出版。

【2017年10月24日】日本外国特派員協会で会見。

【2019年2月】山口氏が伊藤氏を相手に1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴。

【2019年10月7日】一審が終審。

【2019年12月18日】東京地方裁判所より裁判の言い渡しがあり、伊藤氏が勝訴。

【2020年1月】山口氏が控訴。伊藤氏は付帯控訴。

【2021年9月21日】控訴審第一回口頭弁論。双方が意見陳述を行い、終審。

【2022年1月25日】高裁判決の言い渡しにより、本訴(性被害事件)において伊藤氏の勝訴。山口氏の反訴は一部容認。

【2022年7月7日】最高裁の決定により、双方の上告が棄却される。

【2022年8月31日】双方が、判決により命じられたそれぞれの損害賠償金を支払い、民事事件は終結。

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