テレビからCMソングが流れています。「勇気を出して言ってみよう!! 明日のために・・・」。そして「その薬、ジェネリックにできませんか?」と患者が医師に話しかけている。

 これはつい最近の話です。「このCM、まだやってるんかい!!」と、私は思わずテレビの画面に向かってツッコミを入れてしまいました。

医師のサインなしで使用可に

 ジェネリックとは、特許が切れた医薬品と同様の主成分を使ったり、同様の製造法を利用したりして作った医薬品のことです。「後発医薬品」とも呼ばれ、先発医薬品と同程度の効能を持ちながら値段が大幅に安いのが特徴です。

 2008年3月までは、医師が処方箋に「ジェネリックに変更可」とわざわざサインしなければ、患者はジェネリックを使うことができませんでした。しかし、今年4月の診療報酬改定で制度が180度変わり、「ジェネリックに変更不可」という医師のサインがない場合は、ジェネリックに変更することが可能になりました。

 つまり、現在はほとんどの場合、患者が何も言わなくてもジェネリックに変更可能な処方箋になっています。というわけで私は、「わざわざ医師に勇気を出して言う必要などありません!!」と、テレビの前でツッコミを入れてしまったというわけです(もっとも私のクリニックの場合は、4月以前もすべての処方箋に「ジェネリックに変更可」というサインをしていましたが)。

ジェネリックの割合が極めて低い日本

 医療関係者たちが医療費を増やせと叫んでいますが、その前に削減できるところはまだまだあります。同等の効果がありながら値段が3割から7割も安いジェネリック医薬品を使用すれば、それだけで医療費を節約したことになります。

 欧米では薬剤の6割がジェネリックです。ところが日本では2割以下しか使用されていません。日本の医療機関が1年間に費やす薬剤費は、医療費の2割に当たる6.4兆円と言われています。ジェネリックの普及を広めるだけで数百億円単位の医療費を抑えることが可能でしょう。

 今年4月の保険点数改正における処方箋様式の変更は、医師にとっては極めて大きな意味がありました。これまでがっちりと医師側に握られていた処方の権限(薬を選ぶ権限)が、一部とはいえ、医師の手から離れたのです。これは画期的な一歩だと言えます。

病院は余計な手間を増やしたくない

 でも、これでジェネリックの使用が広まったのでしょうか?

 医療の現場は過酷です。病院やクリニックが、そして調剤薬局が日々生き残りをかけて頑張っています。その厳しさは半端ではなく、時には、病院の院長が経営難で自殺したという噂話も漏れ聞こえてくるほどです。