日本をナチスや翼賛体制に走らせないために

 現状の「ネット選挙」をめぐる規制には、発信者のメールアドレスなど、責任所在の明記など、ごく少数の規定があるだけです。

 そしてユーチューブなどの音声動画メディアには「放送法」「電波法」に相当する規制や、とりわけ「放送免許」の許認可取り消しなどが存在しません。

 さらにもっと重篤な不法状態を指摘するなら、ユーチューブなど特定私企業が恣意的に「バンする」などという形で、国民の表現の自由を実質的にコントロールしている。

 この状態そのものが、実際には違憲であると長らく私自身は考えてきました。

 これは生前の團藤重光先生ともお話し、あちこちに書いてきたことですが、例えばTwitter(X)やユーチューブなどのアカウントの凍結などを、明確な理由を示さず、企業が一方的に実施する状態は、不特定多数に対する意見の表明ですから、まさに「放送法」に示される通り、「健全な民主主義の発達」に完全に逆行するものになっている。

 2010~20年代のメディア環境は、1920~30年代の20世紀戦間期、大正エログロナンセンスと治安立法整備が並行した「あの時期」と類似した性格があると指摘しなくてはなりません。

 小池百合子「都知事」が行ったことは、単に「定例記者会見」で「一候補として選挙活動」を行った、にはとどまりません。

 そのようにして収録した「音声動画」を、都の業務として編集、字幕の文字なども書き加えさせ(当然経費の掛かる公務)、出来上がった音声動画コンテンツを民間プラットホーム「ユーチューブ」を通して不特定多数に対して公開。

 同時に「東京都のホームページ」上にも、文字起こしとリンクを掲載するというメディア濫用(アビュース)という、公衆放送における危機管理体制の欠如状態を悪用する、極めて不適切な不法行為をなしていることを指摘する必要があります。

 厳密な、再発防止の対策が取られる必要があるでしょう。

 つまり、今後そのような不適切なウエブページや音声動画を、政府や地方自治体が不特定多数に公衆放送した場合は、放送法における免許取消しに比肩する措置、具体的には、政府であれば担当閣僚、自治体であれば知事本人に対して、罰金刑以上の有罪判決が下される程度に、厳しい措置が講じられること。

「倫理」を超えて「法」の罰則を制定することが望ましいと、専門の観点からは考えています。

 というのも、罰金刑で有罪が決定すれば、5年間の公民権停止となり、知事や閣僚は実質的に政治生命を終了することになるからです。

 これは厳しすぎるか、と問われれば、ドイツで現在も続くナチス再発予防の措置を見ても決して重すぎる処罰ではないと考えられるでしょう。

 こうした関連の話題はこの連載で幾度も検討しているので、ご参考いただければ幸いです。

 結論。

 小池百合子「都知事」が、今回の選挙期間中に引き起こした事態は、公衆放送の観点から見て、極めて悪質と指摘する必要があります。

 何となれば、公務である知事の定例記者会見自らの選挙運動を行い、そのコンテンツを東京都の予算で、都の関係者にコンテンツとして編集させ、都の公務としてユーチューブにもアップロードさせ、最終的に都の正式のホームページにリンクとともに掲載するという、とてつもなく「公衆放送」的に不法な行為だからです。

 本来ならこうした情報公開の危機管理に責任を負うべき立場の首長が自ら率先して不法行為に及んでいることが悪質です。

 加えて、報復人事などによって都庁内部で反対意見が出ないよう押さえつけていること、都議会で多数を掌握し、不法行為を実質トンネル状態で議会通過させていることと合わせて考えれば、まさにアドルフ・ヒトラーとヨーゼフ・ゲッベルスが主導したナチス・ドイツ型のメディア濫用の典型に近いと、専門の観点から指摘しなくてはなりません。

 再発防止のための法整備を、良識ある立法府関係者を含め、学術の観点から広く公衆にお伝えしたいと思います。