2月末からは、環境イニシアティブ「ストップ・テスラ同盟」で活動する若者が、工場向かいの森にツリーハウスを作った。そこで数十人が生活し、森林伐採を阻止するための抗議活動を始めた。

 3月5日、テスラ工場に電力を供給する送電鉄塔が放火され、停電によって自動車生産が数日間停止するという事件があった。これはテスラCEOのイーロン・マスクを「テクノファシスト」と非難する、極左環境団体「ボルケーノ・グループ」によるものだった。同事件による損害額は数億ユーロとされ、3月13日にマスクは同工場を訪問した。

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 この事件に対しては他の環境団体も距離を置き、連邦内務大臣のナンシー・フェーザーが「正当化できない重大な犯罪」と厳しく批判している。しかし、その後も、地域住民や環境団体による反テスラ運動は続き、さらに注目を集めていった。

テスラを歓迎する連邦政府と緑の党

 テスラ工場建設のために伐採された森林は、工場が位置するブランデンブルク州から売却されたものだ。1990年に旧西独に統合された旧東独地域は今も西側より経済発展が遅れ、失業率が高く、一人当たりのGDPが低い。そのために政府は補助金などを出して、旧東独地域に積極的に企業を誘致してきた。東側の土地は西側よりも比較的安価で、訓練された人材もおり、政府の支援も得られることから、近年、再生エネルギーやバッテリー、EVなどの新たな分野で投資が増えている。

 テスラもそのうちの1社で、政府はその投資を歓迎した。2020年、ブランデンブルク州環境局が森林の伐採を許可したのは、工場の建設許可が下りる前だった。政府は周辺の道路や公共交通などのインフラを整え、工場建設を積極的に支援した。

 抗議活動が激化しても、連邦政府による工場拡張支持の姿勢は崩れていない。2022年の工場開所式にスピーチをした連邦経済大臣ロバート・ハベック(緑の党)も、テスラ工場の重要性を訴えつづけている。「自動車生産なくしてドイツへの関心を保つことはできない。未来の自動車をここで生産し、雇用と付加価値がドイツに維持されるように働きかけている」と、「フンケ・メディアグループ」のインタビューに答えている。

深刻化する水問題

 一方、なぜテスラはそれほど環境活動家に嫌われているのだろうか。走行時に二酸化炭素をほとんど排出しないEVは、ガソリン車に代わる環境にやさしいソリューションだと考えられてきた。

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