アップル、複数のAI新興と交渉中

 WSJによると、アップルはオープンAI、グーグル、メタ以外のAI企業とも交渉している。米アマゾン・ドット・コムなどが出資する米アンソロピック(Anthropic)や、先ごろソフトバンクとの戦略的提携を発表した米パープレキシティ(Perplexity)とも協議中だ。アップルがこれら複数のAI企業と提携した場合、ユーザーは自由に接続先のAIモデルを選べるようになる。中国では現地企業のAIを採用するとみられる。オープンAIのChatGPTやグーグルのGeminiなどは中国で禁止されているからだ。

 WSJによれば、中国政府は自国のサイバー空間規制当局による審査を経ない生成AIモデルの公開を禁じている。この規則は2023年8月に導入された。当局はこれまでに中国・百度(バイドゥ)のLLM「文心(Ernie)」など40以上のAIモデルを承認したものの、国外の生成AIは認めていない。

 韓国サムスン電子の最新スマホは、中国国内ではバイドゥのErnieを、国外ではグーグルのGeminiを利用し、AI機能を強化している。アップルもバイドゥと提携し、中国向けiPhoneにErnieを採用したい考えのようだ。

AI企業にもアップルを利用するメリット

 WSJによると、アップルはAI企業との協議において、直接的な金銭のやり取りを求めていない。代わりにAI企業は、Apple Intelligenceを通じて自社のサブスクリプション(定額課金)サービスを販売できるようになる。アプリ配信サービス「App Store」同様に、アップルはその収益の一部を手数料として受け取る、といった契約形態を考えている。

 それでもAI企業にとってはメリットがあるとみられる。メタなどの生成AI企業は、大規模な配信力を持つApp Storeのようなプラットフォームを活用したいと考えている。

 米ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏は「アップルとの提携によりChatGPTの利用は倍増する」と予想している。同氏は、「アップルユーザーの10~20%がChatGPTのようなサービスのサブスクリプション版を選択する」とみている。「アップルの強みは、エンゲージメント(ユーザーの積極的な参加)を伴う大規模な配信モデルを構築していることだ」と同氏は指摘する。