次に30~40代男性のユーザーに着目してみましょう。


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 ご覧のようにこちらの30代の男性も、同年代だけでなく年上や年下のユーザーと共通曲を多く歌っています。年下のユーザーとはどんな曲を共通して歌っているのでしょうか。

 例えばある20代女性とは、YOASOBIさん「アイドル」(2023年)、MISIAさん「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」(2018年)、Kanariaさん「酔いどれ知らず」(2022年)の3曲を共通して歌っていることがわかります。

 次に40代男性に着目してみましょう。


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 こちらの40代男性のユーザーは、30代女性以外のすべての性年齢層のユーザーと、何らかの曲を共通して歌っています。例えば、ある10代女性ユーザーとは、ポルノグラフィティさん「サウダージ」(2004年)、スピッツさん「チェリー」(1996年)といった異なる年代の2曲を共通して歌っています。

消齢化からみるひとりカラオケ

 筆者は年齢層による価値観の違いが小さくなる「消齢化」の共同研究として、JOYSOUNDの歌唱データを用いて行った「全年齢層で歌われる曲」の時系列分析を行っています。その結果からは「全年齢層で歌われる曲」がこの10年で4曲から20曲に増加していることがわかっています。また直近のデータを分析すると、今回のひとりカラオケユーザーの分析でも挙がってきた「アイドル」と「ハナミズキ」は、ともに「全年齢層で歌われる曲」に入っています。

 今回のひとりカラオケを対象にしたデータ分析からも、同じ年齢層という似た者同士だけでなく、年齢層の異なるユーザーと、最近のヒット曲だけでなくちょっと意外な曲も共通して歌っているケースが多数確認できました。

 普段私たちは「ミレニアル世代」や「Z世代」といった枠組みで生活者を分類します。加えてスマートフォンやSNSの普及を背景に、多様化した情報環境の中で「生活者は、世代や個人ごとに異なる世界をみているのである」と考えがちです。

 確かにそのような面はあると思われますが、今回のひとりカラオケのデータからは、個人によってバラバラの情報源に接しているような情報環境だからこそ、年代を問わず共通して歌われている多数の曲の存在が浮かび上がります。

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